バングラデシュでのビジネス成功の秘訣
「日本人は最高のサプライヤーだが、同時に最高難度のバイヤーでもある」
バングラデシュ側工場の社長は、口をそろえて言います。
バングラデシュでも「ジャパニーズブランド」は評価の高いものであり、当地でも「一文高いが品質には間違いがない」と評価が高いです。
逆に値段が高すぎて手が出ない、という声もあります。
現在は日本の大きな販売マーケットである中国でもそうですが、やはり「ジャパニーズ・ブランド」というのは世界でも名だたる水準で知られています。
資源も国土もない日本が戦後数年の間に世界有数の経済大国になってきたのも、このような加工技術や生産管理技術に日本人特有のこまやかさが顕著に表れ、それが世界での信頼を得てきた証拠でしょう。
ただ、それを実現するための内情は大変厳しいものです。
バイヤーとしての日本を見てみましょう。
バングラデシュは「チャイナ+1」や、「これからの生産市場」として注目され、当機構も多くの企業をバングラデシュ企業に紹介してきました。
たとえばアパレル関係。
ユニクロのように「世界ナンバーワンの小売店になる」という目標のもと、大規模に世界戦略を掲げる企業もありますが、まだまだ「Gap」や「Addidas」、「H&M」のように世界展開を築ける企業は少なく、国内市場向けがほとんどの場合が多いです。
そうなるとバングラデシュのアパレル工場に発注する数量はこれらの企業よりも少ない数量になります。
しかも、上記に挙げた世界企業以上の品質要求です。
ある大手工場では、日本企業の発注数量を伝えたときに「これはサンプルの製作でしょうか?」と勘違いされたこともあります。
2~3年ほど前はバングラデシュと日本、双方がブームになり「バングラデシュに発注したい」「日本の注文が欲しい」という時期がありました。
しかし何度か日本企業の注文を受注した企業は、その「品質要求の高さ」と「発注数量の少なさ」、そして「求められる中国を下回る値段の安さ」の三重苦に瀕して、「もう日本企業の仕事はこりごり」という企業も出始めています。
日本側では、まだまだ発注要求が収まるどころか高まるばかりで、完全に「片思い」の状況が始まっています。
日本企業の求めるレベルも理解できます。
すでに日本の消費者は「高いレベルでの商品」に慣れてしまい、それを損なうと全くビジネスになりません。
昨今は、その高いレベルの商品が「さらに値段も安く」という付加価値までついてようやく他社に勝てるという状況です。
現在、バングラデシュでは、まだまだ原材料を他国からの輸入に頼る場合が多く、中国の4~5分の1と言われる安価な労賃が、そのまま製品の値段の差に反映されません。
しかしながら日本が依存してきた中国工場の値上げ動向は今後、減少を見せることは考えられません。
そうなると、やはり将来の事も考えると「バングラデシュ生産」というのは外せない選択肢になります。
ではどうしたら、このギャップを埋められるか?
やはり発注側の日本企業による「ともに育っていく辛抱強さ」が必要でしょう。
原材料の仕入れもそうですし、工場自体もまだまだ改善できるところが多いです。
ワンタイムのでビジネスで結果を出すというのはバングラデシュ側にはかなり厳しいですが、長いスパンで、お互いの妥協点や改善点を見出しながら「我慢強く、試行錯誤しながら付き合っていく」というのがベストな考えだと思います。
20数年前、日本が中国生産を始めたころと同じです。
お互いに我慢しながら、妥協もしながら、時には自ら汗をかいて「育っていく」
これがバングラデシュビジネスの成功の秘訣であると思います。
我々もその一役を担えるよう、日々努力していこうと考えております。